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単語の奥にある気分『日本語 WordNet』との出会い

作成年月日
2016年06月20日 00:15

※この記事には、ある事情(参照:「間違った英語の話をしよう」)のもと、高い確率で間違った知識が含まれています。

知らない単語に遭う、或いは知ってる単語の意外な使い方を見る。そういう時はオンライン辞書に当たるのだが、そこで頻繁に「それに該当する日本語は全部羅列してあるっぽいが、結局意味が掴めん」という事態に至る。例えば「appoint」という単語をweblioで引くと、最初に出てくる部分には以下のように書いてある。

ここに書いてあるのは「”appoint”という英単語が日本語の何に相当するか」だが、それを全通り記憶していくのは大変だ。また、ある文の中のappointが、この日本語訳のどれに該当するかは文脈を見て、それぞれ当てはめて検討しなければならない。他の単語も同様に複数の意味を持っていたらその組み合わせは莫大である。

俺が知りたいのはそういう事では無くて、この単語は「どういう気分なの?」という事である。我々が日本語の「切る」を、「大根を切る・山札を切る・残高が2万円を切る」のように使えるのは、長かったリ短かったリする人生の中でそういう使われ方を目にして慣れ親しんできたおかげだが、その表現に納得できるのは「垂直方向に近い角度で対象の連続性を断つ」という「切るの気分」を知っているからだ。けれど、外国語のそれを感得させてくれるツールはなかなか無いなぁといつも難儀していたら、前出のweblioの中に波長の合う辞書を見つけた。日本語 WordNet(英和)という辞書である。この辞書においてappointがどう記述されているかというと

これだけである。英英辞書の記述を直訳しているらしいので時々おかしな日本語が混ざるが、こなれていない日本語であるが故に、逆にスッと懐に入る。「任命・指名」という言葉を使っていないので、この単語が人間以外(日取り等)にも使えることが分かる。この動詞にどういう前置詞を続けて、目的語と補語をどう並べるのか、とかは書いていないのでどの程度勉強に役立つかは分からないが、俺が知りたかった事はコレなのだ。

「youthful」という単語を辞書で引いて「若い、若々しい、元気な、はつらつとした、若者の、青年らしい」と並べられても、それは「young」と何が違うのだ、とか、若い犬、という意味で「a youthful dog」と言えるのか、とか、そういう漠然とした不安も日本語 WordNetの「若さを連想させる」という一文でスッキリする。

ここまで読んで「じゃあ最初から英英辞書を読めばいいのでは?」と思う人も居るかも知れない。いや、読んではいるのだ。枕元にはいつも「Collins COBUILD Student's Dictionary」が転がっている。だが、そこの説明文もまた「気分を感得していない単語」で構成されているので、言ってる意味はぼんやり分かるけど、毛布の上から触って中の物を当てるゲームをしているようなもどかしさが募るばかりなのだ。

これ、時間足りるのかなと思いつつ、なんとかひとつでも多く言葉の気分を感得したいと思って、今日も辞書のお世話になるのである。