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女性キャラクターの髪型に見る空想と現実の剥離

作成年月日
2007年04月10日 02:15

男性が好む女性キャラクターの髪型と現実の女性が好む髪型の剥離の原因はどこにあるのだろう、という事を最近良く考える。いきなりこんな事を言われても分からないと思うので順を追って話すが、最初のショックは「シュガシュガールーンの健全性」でも触れた「シュガシュガルーン」というアニメだった。

この作品の主人公である”ショコラ”はその日の気分やTPOで髪型を変えるのだが、その内の一つに前の方の髪を頭頂部で結んでいるパターン(公式サイトの画像だがurlがjavascriptによる動的リンクだったので、画像をダウンロードして無断使用させてもらった。)がある。これ、どうだろう。イケてるだろうか。詳しくは知らないが平安時代とか江戸時代とか(えらい離れている)の子供みたいに見えたりしないだろうか。

最初に見た時「正気か」と思ったが、これは女の子からすれば「アリ」なのだそうだ。しかしこんな頭をしたキャラクターを俺はこれまで見た事が無かったし、描いた事も無い。そこから自分自身を翻って考えていくと実際俺は自分が描きやすいような髪の長さを適当に描いた事しかないのである。娘が出来てその娘が「おしゃれ魔女ラブandベリー」にはまって、更にそのカードと同じヘアスタイルを母親に結わせる様になって初めて、「えっ?そんな面倒臭い事をしていたのか?」と驚いたのである。複雑なレイヤー構造と手順によって完成されるそれらは、ただ場所によって切る髪の長さを変えて後は生やしっ放しにしている男の髪型とは根本的な設計思想が違うのだ。

現実でもフィクションの中でも女性の髪形に無頓着な俺が不勉強だったのは当然だが、問題は俗にいう「萌え絵」の中の髪型である。いくつかの例外はあるが、たいてい俺と同程度の知識というか単に「ここは長い方がいいな」「前髪はこんな風に跳ねてるといいな」という好みを羅列しただけの不思議仕様であって、「髪型」というには程遠い物ばかりである。あえて言うなら「生え方」だろうか。時折実際に存在する髪型が導入される事もあるが、例えば今二次元を席巻している「ツインテール」も現実世界の女性からすれば子供にだけ許される髪型であって、そんな頭した高校生が同じクラスに居たら引くという位に実際の在り方から剥離しているのである。(2007年現在)

最初の問題、現実に再現出来そうに無い(=手順が想像出来ない)髪型については、それが

また後者の問題、二次元で好まれる髪型が現実のそれと剥離している点については

という事が気になる。俺自身は余り突飛な髪の毛を描いた記憶は無いのだが、髪型としては現実世界で女性に敬遠されそうな物を描いて来てしまったという自覚が最近芽生えた所である。現実の女子高生から「ちょ、それ勘弁して」とか「前髪とかダサいんで」とか言われるようなヘアスタイルを色々描いてしまい、キャラクター達には本当に申し訳ない事をした。流行が巡ってそういうのが「おしゃれ」と呼ばれる日が来るのを首を長くして待っていてくれと言うしかない。

個人的な本音を言えば「髪形なんてどうだっていいじゃないか、大事なのは人間性だろう?」と思うのだがそこの所を適当に済ませると、知らず知らずの内に「変わり者」という属性をキャラクターに与えてしまいかねない。俺が気にならなくても読む人間によっては「何、こいつ」と思われてしまう可能性があるのだ。

最後に、現在発売されている萌え絵の中で秀逸な(と思っている)物をひとつ紹介しておきたい。エンターブレインから発売中のPS2用ソフト「キミキス」のキャラクターデザインである。ユーザーの好みと現実に需要のある髪型の接点をギリギリのバランスで表現したデザインと言っていいのではないだろうか。