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4月アニメ考査(最終)

作成年月日
2007年10月08日 00:05

10月アニメが色々始まったので、その前に4月から開始されたアニメの最終評価を書いておこう。前回の「4月アニメ考査(第3段)で”視聴継続”に振り分けられたのは以下の番組群だった。

判断保留

有望株

視聴継続

結局この中で殿堂入りを果たしたのは『おおきく振りかぶって』だけだったのだが、とりあえず個別に感想を書いていこう。


最終回まで見続けられず

『ヒロイック・エイジ』
悪くは無かったのだが、主人公に感情移入出来ない設定なので途中でしんどくなった。機会があればもう一度トライしてみたい所ではある。
『機神大戦 ギガンティック・フォーミュラ』
他の国のパイロット達の様子を(過去やモノローグも含めて)覗き見る事が出来るシステムが開発された辺りから雲行きが怪しくなった。そりゃアニメを作る方にとっても便利なシステムだがおかげでキャラクター描写のウェイトが分散してしまい、しかも個々のエピソードが大した話では無かったので、主人公側のドラマ(それがあったかどうかを俺は知らないのだが)を鑑賞する暇もなかった。
『地球へ…』
話の筋をあらかた知っていると興味を持続するのが難しく、淡白な演出もそつが無さ過ぎたのか観ていて退屈だった。優等生といえば優等生なのだが、肩入れしたくなるような魅力に欠けた。
『アイドルマスター XENOGLOSSIA』
やっぱりダメだった。キャラが裏切ったりロボが盗まれたりと色々変数度は高かったのだが、根本的な話に一貫性が無い為、変数度の高さが面白さに繋がらなかった。
『おねがいマイメロディ すっきり♪』
古参のスタッフが参加した回は突き抜けた笑いも観られたが、全体的には”最小の手間で最小の成果”という作りに着いていけなくなった。バラエティの中の10分枠という変則的な形ではなく、これまで通り30分1本枠での続編にして欲しかった所である。
『ラブ★コン』
キャラは良く動き、観れば毎回楽しめる作りになってはいたのだが、如何せん「恋愛話以外存在しない」という状態では早々に飽きが来てしまい脱落。

最終回まで見たけど殿堂入りならず

『英國戀物語エマ 第二幕』
当初の予想に反して原作から大きく逸脱した独自のストーリー展開には驚いたが、その部分の整合性がメタメタでネタとしてしか楽しめなかった。
『魔法少女リリカルなのは StrikerS』
OVA3話くらいで纏めてくれた方が良かった。出し過ぎた新キャラをコントロール出来ず、全員がただの賑やかしで終わってしまった。はやての死亡フラグとかヴォルケンリッターの死亡フラグは何の説明もなくスルー。殺せないならそんな振りはしなくてよろしい。
『ぼくらの』
これも原作から大きく逸脱した展開だったらしいが、後半(おそらくアニメオリジナル部分)はエキセントリックな魅力が影を潜め、まるで手触りの違う話になった。キャラクター達の行動が製作者にとって優しい物になり、テーマのハードルが下がってしまったのが残念である。
『天元突破グレンラガン』
話の掘り下げを突貫主義で阻害していた兄貴分が早々に死んだおかげでそこからは俄然面白くなった。放映当初から「こいつ邪魔だなぁ」と思っていたので、この作戦には素直に「やられた!」と思ったのだが、最後の方で戦闘がエスカレートすると、結局突貫主義でまとめられてしまい、そこでどうしても感情移入が妨げられてしまった。「熱血」と「仲間の犠牲」はこの作品の中で執拗に繰り返されるテーゼだが、そこの所に来るまでに必要な手続きが取られていないので半ば”免罪符”の様な扱いであった。(実際製作者も洒落のつもりでやっているのかもしれない)。そこの趣味が合わない所を除けば、全力で作られた良いアニメだった。
『らき☆すた』
普段の変数度の低さをネタの変数度の高さで埋め合わせるやり方に途中で馴れてしまい、本編を早送りで観つつ「らっきーちゃんねる」とエンディングだけ楽しみにするようないびつな見方に落ち着いた。こちら側でかなり好意的に補完しなければキャラクターに血が通わない作りはどうなんだと思う。

まだ視聴中

『ゲゲゲの鬼太郎』
コンスタントにレベルが高く、猫娘の萌えっぷりも健在で時々観る分には楽しめるのだが「どうせ当面終わりそうに無い」という所が欠点と言えば欠点である。

殿堂入り

『おおきく振りかぶって』
当初の期待通り、原作の面白さを十二分に再現し、それだけで終わってしまった。この作品に関してはたったの2クールで勝手に終わられても困るのだが、ここまで徹底的に原作をリスペクトされると作品的には「どうして今アニメ化する必要があったのか」と思わざるを得ない。勿論商売として考えれば今アニメ化するのは当然なのだろうが、今後原作の方が一区切り付いたら、是非とも第二期を制作して欲しい所である。

総評

終わってみれば(現在も放映中の『ゲゲゲの鬼太郎』を除けば)『おおきく振りかぶって』の一人勝ちという有様だったが、これをして「やっぱり最近のアニメはダメだ」とは言えないよなぁ、と思った。『ヒロイック・エイジ』や『機神大戦 ギガンティック・フォーミュラ』でもタイミング次第では十分楽しめたり感動したりしたかも知れない。タイミングと言うのはつまり俺が中学生の時に観ていればという事である。

番組改編の時期になる度に夥しい数の新番組を即切りして行っているが、それはもう仕方無いよなと思うのだ。時代が違うとか趣味が違うという以前に観て来た量が違うのである。新番組の中での優劣を付ける以前に記憶の中の膨大な作品群と比較して「アレの方が面白かった」「こんなのではアレの足元にも及ばない」と切り捨てられているのだから向こうもたまった物ではないだろう。冷静に考えれば40歳を目前に控えた男に毎週アニメを観られても困るという状況である。製作者も「そんな所まで満足させようとは思っていませんよ」と言いたいだろうし、俺が過去に夢中になった作品だって、当時40手前の人間をも夢中にさせたかと言うとそりゃさせて無いよなぁ、と思うのである。

我々の世代は日本アニメが劇的に変貌する所をリアルタイムで成長しながら観て来た為に、ついついいつまでもこちらの成長に併せて作品が鑑賞に耐える物へと進化してくれる様な気になってしまっているのであるが、よーく考えたら中学生から40歳までをコンスタントに満足させるコンテンツなどそうそう生まれる筈が無いのである。向こうにしてみれば「頼むからさっさとゴルフ場にでも行って下さい」という感じだろう。だからと言ってアニメを観るのを辞めたり、手を控えたりする気は無いのだが、それでも向こうからすれば自分は「相手にする必要のない人間」である事は忘れちゃダメだよな、と思った次第である。