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牽強付会(「ひぐらしのなく頃に」放送中止に寄せて)

作成年月日
2007年09月25日 21:03

はい。またまた斧で殺人(未遂)事件が起きましたよ。またまた「ひぐらしのなく頃に」が槍玉に上がっています。いやもう、なんだこれ。放送中止(東海テレビ)の件に関しては、別の局では放送されたという事もあり、今は静観することにする。今回はこれ幸いとアニメ叩きに躍起になっている産経新聞の記事の捏造っぷりが素晴らしいので、彼等の記者魂に敬意を表して”産経流”にその記事を取り上げたいと思う。憶測による物や、物を調べずに書いている文章をこの後多々書いてしまうが、それが産経クオリティなのでご容赦願いたい。

産経新聞の記事は都合が悪くなると勝手に消えるので全文を引用しておく

おので切りつけ相次ぐ 凶行はアニメの影響?

 未成年がおので親を切りつける事件が相次いだ。京都府警南署の巡査部長(45)が京田辺市の自宅で殺害されてから、25日で1週間。就寝中の父をおので襲った凶行について、二女(16)は逮捕された直後「後悔していない」と話した。理由は「父の女性関係が嫌だったから」。捜査幹部は「彼女なりの論理なのか」と理解に苦しんでいる。

 おのは、犯行の5日前に買い、自室に隠し持っていた。犯行前には「返り血が目立たないよう」黒のワンピースに着替えていた。

 この事件では、マンガ化・アニメ化されたゲームの影響が、インターネットの掲示板などで指摘されている。主人公の少女が振り回すおのが象徴的に使われ、猟奇的なシーンを問題視する声もある。事件後、一部テレビ局で同作のアニメ放映が休止された。

 二女は「ゴシック・ロリータ(ゴスロリ)」と呼ばれる作中の主人公が身にまとっていた黒ずくめの衣装に興味を持っていたことも判明。絵が得意で、マンガやアニメにも強く興味を抱いていたとみられている。

 専門家らによると、長野の事件は、アニメなどの影響というよりは、「単に京都の事件に触発されたのでは」との声も上がるが、犯罪社会学が専門の間庭(まにわ)充幸・静岡大学名誉教授は「ゲームが少年犯罪に与える影響は以前から指摘されてきた。京都や長野の事件にも影響を与えていたかもしれないことは十分に考えられる」と指摘する。

 その一方で、間庭教授は、「今の少年たちはインターネットのような素早い反応ばかりを求めて心の余裕がなくなっている」と話す。対話が苦手で家族とのコミュニケーションさえも満足にとれず、親子関係の崩壊につながるケースも増えているという。

 こうした状況が続くと、日常生活の中でも「嫌いだから」といった短絡的な理由で「親をおので切りつけるような猟奇的な犯罪が起きやすくなる」と話している。

(2007/09/24 22:53)

まず最初の段落にある理由は「父の女性関係が嫌だったから」。捜査幹部は「彼女なりの論理なのか」と理解に苦しんでいる。という文章が目を惹く。捜査幹部の発言という事だがもしこれが本当なら「父の女性関係が嫌だったから」殺したという16歳の少女の気持ちが理解出来ないようなら、さっさと別の部署に配置換えして貰った方が良い。普通に理解しやすい話である。いくら身内がその娘に殺されたからと言ってこんな低脳発言を捜査員がするとは思えないので、勿論これは産経新聞の捏造だろう。犯人の次女の行為が「常人には理解出来ない行動」でないと、アニメの影響という着地点に持っていけないが、いくらなんでもこの話が「理解出来ない」と言うのは新聞記者として情けないので「捜査幹部」という良く分からない立場の人が言った事にしているのである。この「捜査幹部」さんはとても働き者で、産経新聞の別の記事にも以下の様な形で登場している。

 府警は、長期間に不満や嫌悪感が募り、殺意を抑えきれなくなった末の犯行とみているが、強い殺意の最終的な引き金は見当たらない。二女のパソコンやメモ帳を分析するなど動機の解明を進めており、捜査幹部は「手おので首を切るという犯行は異常。好きだった漫画やアニメなどから何らかの影響を受けていた可能性はある」と指摘している。

と、ここでも産経新聞の記者に対して感想を漏らしているのであるが、この捜査幹部の談話は他の新聞社の記事では確認出来なかった。というより、他の社の記事にはこの「捜査幹部」さんは出てこないのである。産経の記事の中でも警察の公式発表で語られた事は「府警は〜と見ている」となり、それ以外が「捜査幹部は〜」となるのが興味深い。この捜査幹部さんには是非実名で登場して頂きたいものである。

三段落目と四段落目の主人公の少女が振り回すおのが象徴的に使われ、猟奇的なシーンを問題視する声もある。二女は「ゴシック・ロリータ(ゴスロリ)」と呼ばれる作中の主人公が身にまとっていた黒ずくめの衣装に興味を持っていたことも判明。というのも凄い。事件から1週間も経つのにまだ”斧”と”鉈”の区別が付かないなんて事がある筈もないので(ネット上でも散々指摘されているし、投書も相当数行っているだろう)これは完全に「誰がなんと言おうと『ひぐらしがなく頃に』の主人公である少女(この時点で間違い)が持っているのは”斧”なんだ。メディアの力でそういう事にしちゃうのさ」という目論見の元に書かれている文章である。この記事を書いたダニみたいなクソ記者は自分自身”これは鉈だよなぁ”と知っているのに、やる気満々なのか、編集部の方針に無理矢理従わされているのかは分からないが、頑なに”斧”と書き続けているのである。

四段落目の「ゴシック・ロリータ」(ゴスロリ)の行も最高である。ゴシック・ロリータの略称をカッコつきで(ゴスロリ)と丁寧に解説してくれる程の知性があるようだが、この記者が作中の主人公が身にまとっていた黒ずくめの衣装と書いた、その少女のデフォルトの服装はこれである。

黒いか?ちなみにアニメ版で他に黒い服と言うと実際に彼女が殺人を犯した章で着ていた服が一応黒いと言えば黒い。

これゴスロリ?俺も詳しい方では無いが、俺の記憶が確かならこれはゴスロリではなく”ジャージ”という洋服である筈だ。唯一それっぽい服があるとすれば作中に登場するファミレスの制服がゴスロリと言っても良いのかも知れないがその画像を見て貰えば判る通り

この服を着てるのは別のキャラだ。新聞記者ならちょっとは物を調べてから書いたらどうなんだと思うのは早計である。彼らは勿論調べてから書いているのである。素人がモノの1分でこの画像に辿り着くのに、本職の人間が辿り着けない筈がないではないか。ちなみにこれらの画像は他サイトや版権元から何の了解も得ずに勝手に保存し、勝手に貼り付けたものである。言い逃れ出来ないようにファイル名も変更していない。関係各位の皆様、申し訳ありません。これ位の事をしないと産経クオリティには到達出来ないと考えました。

五段落目で専門家らによると、長野の事件は、アニメなどの影響というよりは、「単に京都の事件に触発されたのでは」との声も上がるがと書いておきながら(実際この長野の事件で「ひぐらしのなく頃に」に言及している新聞社は産経新聞だけであり、他の社では「京都の事件に触発されたのではないか」という見解が多い)すかさず犯罪社会学が専門の間庭(まにわ)充幸・静岡大学名誉教授という、一見権威がありそうな人物を登場させて「ゲームが少年犯罪に与える影響は以前から指摘されてきた。京都や長野の事件にも影響を与えていたかもしれないことは十分に考えられる」と言わせ、しかしそれは余りに無理矢理だと思われるだろうと危惧したのか次の段落では、また別の原因(今度はインターネットですよ{笑})を持って来て多角的な物の見方をしているポーズまで取る念の入れようですよ。いやぁ、内容はともかく、良く出来た構成だと感心してしまうな。

産経新聞は事ある毎にゲームやアニメや漫画を引っ張ってきて叩いて、後になってその記事を削除するという事を繰り返してきたのだが、基本的に公正を美とする当サイトではソースも論理も統計も引用せずに他者を批判するのはやめようと思ってきたので(そうは見えなかったかもしれないが)今までこの産経新聞について書く機会が無かった。しかしやってみれば判るがその辺を考慮しなければ記事なんていくらでも書けるのである。確かにこれはとても楽なので、一度こうしたやり方を覚えてしまうと、そうそうやめられる物でもないのかもな、とは思った。

追記

そうは言っても結局文章を引用し、画像を検索し、他の新聞社の記事をチェックすると言った最低限の事はやってしまった為、”産経クオリティ”で送ると書いた冒頭の宣言は虚偽の記載という事になる。謹んで訂正し、お詫び申し上げます。