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運命の天秤(W杯第7段)

作成年月日
2006年06月28日 16:14

スイス×ウクライナ戦、イタリア×オーストラリア戦。同日行われたこの2試合、奇しくも双方ペナルティキックで勝敗が決まった。

延長戦でも決着がつかず、ついに今大会初のPK戦となったスイス×ウクライナ。ウクライナのシェフチェンコは以前触れたNHKスペシャルで、祖国への熱い思いを吐露していたが、今大会での活躍となるとまだ満足の行くものでは無かったであろう。夢の続きを観る為の一騎打ちの先鋒に立った彼が、胸中にどれだけの物を抱えていたのかは知る術も無いが、結果から言うと彼が撃ったボールはなんなくキーパーに止められてしまった。

90分+30分の激闘で足が言う事を聞かなかったのか、それとも色々難しい事を考えてしまったのか、祖国の命運を担うにしてはコースも威力も中途半端で、ウクライナもここまでかと思われたが、なるほど、サッカーは何が起こるか分からない。いや、次に行けるかどうかの責任を負って普段通りに蹴る事が余程難しいという事か。

シェフチェンコを止めた事で俄然有利になったと思われたスイスの選手が軒並み止められてしまう。結局1本も決められぬまま、落ち着きを取り戻したウクライナに決められ続けて大会を去る事になった。

俺はこのPK戦を観るのが大好きである。もし自分がその立場に立たされたら絶対他の選手に代わってくれとお願いしてしまうだろうが、1本、また1本と進むに連れて運命の天秤が傾いたり戻ったりする残酷さがたまらない。不勉強な自分が知ってる選手はこの1本目を外したシェフチェンコだけだったが、もしスイスの選手の中にも知った顔があったのなら、また違った感慨を抱いただろう。

イタリア×オーストラリア戦は結果論だが目指している目標の違いが最後のPKを生んだ気がする。目標にしていた決勝トーナメント出場を果たしたオーストラリアに対して、更に上を見ていたイタリアはここで延長戦に入る事を良しとしなかった。(もちろん退場者が出て一人少ないという要因も大きいが)

後半ロスタイムに訪れた千載一遇のチャンス。かつて韓国代表を率いたヒディング監督の前で相手ゴールキーパーと対峙したトッティはこの時何を考えていただろう。4年前にシミュレーションの判定を受けていなかったらこうなっていた筈だと、あの時の事を思い出していただろうか。それともただ、目の前のゴールしか見ていなかっただろうか。

外野からすれば抜群に燃えるシチュエーションの中、落ち着いてPKを決めたトッティはやはり大した物である。