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ささやかな褒賞(W杯第2段)

作成年月日
2006年06月11日 17:56

コートジボワールVSアルゼンチン!

初出場のコートジボワール。ドログバしか名前を知らなかったが良いチームだった。アルゼンチンも風格を漂わせる程の試合巧者ぶり。前半から両者互角の攻め合いを見せるがコートジボワールは最後の一手が決まらない。

「そこから届いちゃうのかよ」という常識外れの俊足で面白いようにアルゼンチンのパスをインターセプトし、ボールを持ったら脇目も振らず上がっていく。初めてのワールドカップとは思えない堂々とした戦いぶりを披露するも、1点、また1点とアルゼンチンにゴールを決められ、時間が経つにつれ彼らの顔に悲壮感が漂い始める。

100%のパフォーマンスを発揮しているのに崩せない。攻撃の形を作っているのに跳ね返される。ペナルティエリアに切り込んでもファウルも取れずに倒される。見ている側にはほんの少しの差に見えるが、戦っている彼らは恐らく緩やかな恐慌状態とも戦わなくてはならなかっただろう。

身体能力、ボールコントロールのスキル、総合的に見ればパラメータは決して劣っている訳ではない。ただ選択出来る戦術のオプションが少なかった。ここを止められた時にどう事態を打開するか、一つダメだった時に選択出来る次の作戦があるか。まるで学生麻雀でならした大学生が始めて雀荘に乗り込んで老獪な常連に弄ばれている様な感じであった。

精度の高いクロス、豊富なセットプレーのオプション、連動して相手DFを釣る動き、それら高度に洗練された現代サッカーの最前線に比べれば、確かにコートジボワールの戦い方は真っ直ぐ過ぎたのかも知れないが、それ故に彼らの表情が後半曇っていくのが見ていて辛かった。

「そんなに悪くないんだ」「ちょっと知ってるサッカーの数が違うだけなんだよ」ドイツで行われた試合の、しかも翌日の録画放送では今更応援した所でどうしようも無いのだが、後半残り時間も少なくなった頃にはとにかく1点でいいからアルゼンチンのゴールマウスをこじ開けてくれと願った。このまま終わってしまっては勿体無さ過ぎる。勝利をくれとは言わないがせめて1点、それ位の褒賞は与えられて然るべきサッカーを彼らはしていた。

そして願いは聞き入れられる。右から入れたクロスが左に跳ね返り、それを諦めずに追いついて折り返したマイナスのボールをドログバがゴール正面からネットに突き刺した。完全に相手を上回った上で手に入れた、完璧なゴールである。

結局コートジボワールの追撃はここまでで、試合は2-1のままタイムアップ。大方の予想通りアルゼンチンが勝利した訳だがこのゲームに限っては2-0と2-1では得失点差の問題以上に意味が違う。やってる方は1点取っただけで喜ぶ訳にはいかないだろうが、良いゲームを見せてくれたチームには(等しくとは言えないのがつらい所だが)それに見合う物を手にして欲しいと思う。大変かもしれないが、この後も是非頑張って欲しい。

そしてこんな良いゲームの録画に失敗してしまうAVマウスの連動予約は今後絶対あてにしないぞと心に決めたのだが、その件に関しては次に書こう。まだ推測だが、どうやらこれにはとんでもない落とし穴があるようだ。いやぁ、録画しておいて後で観ようとか思わなくて良かった……。