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酷い目にあった

作成年月日
2006年04月14日 21:40

俺は基本的に「今日の運勢」とかそういう類の物は信じないのだが、今日ばっかりは運勢という物の存在を信じたくなった。少なくとも「女難の相」というのはあるのかも知れん。

液晶モニタを見に立川のビックカメラまで出かけたのだが、それは混み合ったエスカレーターの上り途中で起きた。すぐ目の前に立っていたおばさんがこっちを振り返って、何と言うか形容しがたい目で睨むのである。「え、何?」と思ったがそういえば、その一瞬前にジャケットの袖が何かに当たった様な感触があった。こんなに混んでいるのだ、そりゃ袖くらい掠るわ。何を怒っているのだ?と思ったら、エスカレーターが上についた途端、何度もこっちをねめつけながら、すたすたと早歩きで遠ざかって行くのである。

何だコレ……ちょっと待て、それはもしかして何か?自分が痴漢にあったというアピールなわけか?くわっ、冗談じゃないぞ、いや、そう考えればすたすた逃げたくなる気持ちも分かるが、取り残された俺は茫然自失で、状況が分かって来るにつれて吐き気すら催す有様である。

これまで痴漢に間違われた事は一度も無いが、これは相当なものだ。まだ「キャー痴漢!」とか「止めてください!」とか言ってくれれば受けて立ちようもあるが、向こうが何も言って来ない以上俺には弁明の余地もない。こんな屋外の混み合ったエスカレーターで袖が触れたか触れないかの接触で、即、加害者決定である。その気になればターゲットはよりどりみどりのこの状況で、よりによって子連れのあなたが選ばれたと、そういう話になってるのか?

愕然としながら喫茶店に入り、小一時間も休んだ後電車に乗ったのだが話はまだ終わらない。平日夜の下り電車は割と混んでいて、先程のショックから両手をポケットに入れてドア付近に立っていた俺の隣に大きな荷物を抱えた女性が立った。混み具合は人と人の間に30〜50cm位の隙間が作れる程度、ギュウギュウ詰めという程ではない。

幾つ目かの駅でスカスカのデイバッグを左肩に下げた男性が乗って来て、我々に背を向けて立った。その時、その男性の真後ろに立つ事になった先の女性が、自分の荷物に当たるのを嫌って、男性のデイバッグを前に押しやったのである。そんな事を何度か繰り返すがそれでもデイバッグはまた元の位置に戻ってくる。業を煮やした女性は今度は男性の背中をドアの方に押しやったのだ。

男性が振り返って「なんなんですか」と尋ねたらその女性は悪びれもせず憮然としながら「反対側(右肩)にかければいいでしょう」と、バッグの持ち方を指示したのである。男性のバッグはスカスカで他人の邪魔になるような物ではない。女性の荷物がパンパンに膨らんでいるから、荷物が干渉するのである。しかも彼女の後ろにはまだ僅かながら後退出来るスペースがあるにも関わらず、一歩も動かず荷物を持ち替えようともせず、後から乗ってきた男性に「邪魔だから反対の肩にかけろ」と言うのだ。男性は納得いかない風だったが、とりあえずバッグを右肩に担ぎなおした。

ここに来てたまらず「そりゃ、おかしいよ」とその女性を咎めたのだが、じっと窓の外を見たままこちらを向こうともしない。顔を覗き込んでも怒った様な顔をしたまま聞こえない振りである。くわぁっ!何だこりゃ。一体どういうメンタリティなのだ。愕然としながらもここで下手に肩でも叩こうものならそれこそエスカレーターの再現である。状況的にはもう終わった事なので、それ以上追求はしなかった。

「女性専用車両」というのが発明された時は「また効率の悪いアイディアだな」と思ったのだが、今俺は猛烈にそのアイディアを賛美したい気分である。電車の中だけといわず、歩道も車道も喫茶店もデパートも、全部男性用と女性用の通路を分けて欲しいと、今日の所は心底思うのである。