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くすぐり上手

作成年月日
2006年03月16日 17:29

いよいよあと一週間でPS2ソフト「エースコンバットゼロ」が発売される。先日公開されたデモ映像(公式サイトから入ってTrailers→Game Trailersへ)で期待値はマックスである。

思い返せば初めてこのシリーズに触ったのは人の家にあった「エースコンバット3」だった。それまで家庭用ゲームにはさして関心が無く、「ぷよぷよ」をプレイする為だけにメガドライブを持っているだけだったが、これのせいで速攻プレステ本体を買う羽目になった。以後ウチに来てこれをやらされた人間は男女を問わず数多い。

このシリーズの秀逸な所は「くすぐり」の上手さである。PS2で発売された「4」以降特に顕著なのだが、例えば敵味方の無線が乱れ飛ぶ中に自機に対する賞賛の声が混じるのである。味方地上兵曰く「メビウス1(自機のコードネーム)が来てくれたぞ!」とか「ラーズグリース(自小隊の通り名)だ!」とかそういう無線が(特に後半)ひっきりなしに入ってくるのである。敵は「ラーズグリースの悪魔なのか?」と怨嗟の声を上げ、部下は「ウチの隊長は墜とせない。敵もすぐに気付く」と絶大な信頼を寄せる。

こんな無線が勇壮なBGMと共に耳に入って来る度にちょっと泣きそうになってしまう。「わかった。ちょっと待ってろ、俺頑張るから!」と本気でコントローラーを握ってしまうのである。他人から見ればアホ丸出しだが、この無線を始めシナリオ、BGM、ムービーの全てが寄ってたかって「世界の命運はエースの君にかかってるんだ」と持ち上げてくるのである。とても抗えるものではない。人知れず敵地に潜入し破壊工作に精を出しても味方から「傭兵風情が」と罵られる「マーセナリーズ」(洋ゲー)とはえらい違いだ。

ゲーム性という点においては、実はこの手のゲームはそんなに高く無い。使える機体や武器の数が多いので変数度は上がるのだが、高速で優勢劣勢が入れ替わるバーチャファイターや数ターン先まで読んで行動を入力しなければいけないガンパレードマーチ等に較べると、エースコンバットの戦闘は緩慢である。しかし「演出装置」としては、このシリーズは国内外を問わず断トツの1位だろう。このゲームは人を「いい気にさせる」のである。

余談になるが最初に書いたデモ映像を見ていたら、隣の部屋にいた女房が「エースコンバットだ!」と叫んだ。初めて聴く曲なのに「音楽がエースコンバットしていた」ので判ったそうだ。朱に交われば何とやらである。女房はすぐ墜落してしまうのでこのシリーズをプレイする事はあきらめているが、やはりこのゲームが大好きである。俺が「いい気になっている」のを横で観るのが楽しいのだろう。